面白い本を探す

宇佐美まこと「骨を弔う」の感想です。

宇佐美まこと「骨を弔う」☆☆☆

骨を弔う

四国の田舎町に暮らす家具職人の本多豊は、市内の堤防から人間の骨格標本が発掘され、それが本物の人骨と間違えられて大騒ぎになったというローカル新聞の記事を読んで昔の出来事を思い出した。

豊は30年前の小学生の頃、仲の良かった仲間たちと一緒に、学校の理科室にあった骨格標本を山中に埋めたことがあった。

気に入らない担当教師を困らせようとして骨格標本を盗み出した首謀者の佐藤真実子、真実子の親友の水野京香、豊の親友の大澤哲平、生真面目な少年・田口正一、そして豊の5人で、遠くまでバスで出かけて埋めた骨格標本だが、埋めた場所は新聞記事にあった発掘場所とは違っている。

豊には、あの時埋めた物は本当に骨格標本だったのかと言う疑問がつきまとって離れない。本物の人骨だったのではないか・・・。

30年前の疑問を明らかにしたい豊は、まず東京で大手広告代理店に勤務する親友・哲平の元を訪ねた。


30年前に起こした子どものイタズラには違った事実があったのではないかと気になった男性が、当時の仲間たちの元を訪れて当時の事を話しているうちに、真実の姿が徐々に明らかになっていくというミステリィですが、物語の全体的な印象は自分探しと言うか、40歳を超えても人生の生き方に悩むそれぞれが、昔の事を回想しているうちに新しい人生に向き合うというような話になっています。

事件の謎そのものは、読み進むうちに何となく見当がつきますけど、小学校の仲良しだったそれぞれの人生の物語は、なかなか興味深く、また最後のオチは個人的にはいらないような気もしますが、そのオチで成る程あれは伏線だったのねと改めて思う場面もありました。

家族や人生の再スタートがテーマになっていて、読後感も悪くなく、なかなか面白いミステリィでした。