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石原慎太郎「青春とはなんだ」の感想です。

石原慎太郎「青春とはなんだ」☆☆☆

アメリカを放浪していた青年野々村健介が、身体をこわして教師を辞める旧友からの誘いで、地方都市の高校の英語教師に就任し、青臭い破天荒な教師として、熱心なラグビー部顧問として、生徒たちと交流を深めて若者の人格形成に寄与し、また田舎町ならではの利権構造に対決するという実に痛快な物語です。

あの元東京都知事も若かりし頃(1968年発表の作品です)は、こんなに楽しい小説を書いていたんですね。

この作品は石原裕次郎主演で映画化され、更に夏木陽介主演でTVドラマ化され人気を集め、この小説とは直接関係ないですが青春シリーズみたいにドラマ化されて「でっかい青春」や「飛び出せ青春」などの連続ドラマになっていました。

管理人は世代的にちょうどかぶさるのでエラく懐かしい気持ちですけど、そういう背景を除いても、この小説は実に面白い作品です。

時代背景が昭和30年代の終りか40年代の前半で些か古いし、主人公の野々村健介がアメリカ留学(本人に言わせると放浪)している際に敵国民扱いされた時もあったように、戦争の影がまだ少し残っているような時代の物語です。

そして普通の人の常識が常識として通用していた時代でもあります。

作品に登場する生徒たちは、仮に不良ではあってもそれなりの順法精神やプライドを持ち、やって良い事と悪い事の最低限の区別はついています。

今のように何でもありで、下手するとそれを助長するかの様な加害者の人権をうるさく唱える変な人たちは少なかった時代。

だからこそ主人公・野々村健介の様な熱血先生がいれば、片田舎の不良生徒たちを鍛え直せたのかも知れないけど、今は一人二人の力ではどうにも出来ない時代になってしまいました。

熱血先生が生徒たちと真正面からぶつかって、彼らの手助けをしながら、自分に対して誇りを持った人物を育てるという教育理念で、田舎町の頑迷な人々や古い因習に立ち向かう爽快な物語。

高度成長期の明るさを感じ、古き良き時代を懐かしみつつ、今でもついつい手にとってしまう管理人お気に入りの勧善懲悪のエンターテイメントです。