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ソフィー・ジョーダン「罪なき嘘の罪」の感想です。

ソフィー・ジョーダン「罪なき嘘の罪」☆☆☆

罪なき嘘の罪

19世紀のイングランド。結婚式を挙げた直後に夫のブルックシャー伯爵は理由も告げずに家から立ち去り、新婦のメレディスは純潔のまま取り残された後も、伯爵夫人として領地と屋敷を守ってきた。

それから7年が過ぎたある日、新妻を残して姿を消した夫が亡くなったとの知らせが入った。

更に半年が過ぎた頃、メレディスの元に伯爵の腹違いの弟で賭博場を経営する男ニックがブルックシャー伯爵家を継ぐ事になったという知らせが届く。

式を挙げただけの夫婦に跡継ぎとなる子供はなく、夫は遺言を残さないで死んだ。

このままでは全ての財産がニックの物となり、メレディスは無一文で追い出されてしまうかも知れない。

認知症の父とメレディスの他には身寄りのない叔母、更には変り者の使用人を抱えて、誰の助けも借りずに一人で伯爵家を切り盛りしてきたメレディスは、追い出される訳にはいかないと、前伯爵の子供を妊娠していると偽ることを決める。

そうした中でメレディスの前に現れたニックは爵位継承や兄の遺産には興味を示さず、メレディスとその家族は彼が養うと告げた。

まだ見ぬニックを、兄に似て無責任で非情な男だろうと思い込んでいたメレディスが安堵したのもつかの間、亡き夫の恋人だったという男性が現れたことから、亡夫がゲイだったことが判明する。

メレディスの妊娠が嘘で自分が騙されていた事を知ったニックは激怒し、家長の権限でメレディスを無理やり他家に嫁がせることを決めてしまう。

しかしニックは既にメレディスに惹かれているのだった。


純潔のまま夫に捨てられた事で女性としての自信をなくし、愛など二度と求めないと誓う愛情深き女性と、愛を捧げた男性に捨てられた母を見て育ち、愛などは身を滅ぼすものだと言いながら心の奥では愛に憧れる賭博場経営者の男との、惹かれ合いながらもすれ違う気持ちを描いた作品です。

今ひとつ物足りなさを感じるところも有るし、結末はやや唐突な印象ですけど、全体的には良く出来たロマンス小説だと思います。