面白い本を探す

スティーグ・ラーソン「ミレニアム」の感想です。

スティーグ・ラーソン「ミレニアム」☆☆☆

ミレニアム

物語は月刊誌「ミレニアム」の発行責任者ミカエル・ブルムクヴィストが大物実業家ヴェンネルストレムから名誉毀損で訴えられ、有罪判決を受けた場面から始まります。

ブルムクヴィストが「ミレニアム」誌上で行った告発は事実だったが物証がなく、どうやらヴェンネルストレムが仕掛けた罠に嵌ったらしい。

「ミレニアム」を共倒れさせないため責任者を辞任したブルムクヴィストに、今でこそ斜陽だがかつてはスウェーデンを代表した大企業ヴァンゲル・グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルから調査依頼が来る。

その依頼内容とは、36年前にヴァンゲル一族が暮らす島からヘンリックの兄の孫娘ハリエット・ヴァンゲルが忽然と姿を消した失踪事件の真相を突き止めて欲しいというもの。

多くの欠点を抱えお互いが憎みあうヴァンゲル一族の中にあって、ハリエットはヘンリックお気に入りの素直な可愛い娘だった。

ヘンリックからの依頼にブルムクヴィストは自分は探偵ではないと断るが、ヘンリックは仕事に取りかかってくれればヴェンネルストレムが不正していた証拠を渡すと告げる。

無理筋な話だと思いながらも島に住み込むブルムクヴィストだったが、調査を始めると事件の背景にある様々な事に捉えられていく。

そうした中でブルムクヴィストの助手として雇われたのがリスベット・サランデルという小柄でやせ細った少年のような女性。

無口で愛想がなく誰の指図も受けないリスベットだが、彼女の調査能力は恐ろしいほど高く、ブルムクヴィストは彼女の助けを借りて36年前から続く事件の核心に迫っていく。


雑誌「ミレニアム」の共同オーナーで編集主幹をするジャーナリストで、女好きだけど高潔なブルムクヴィストと、民間セキュリティ会社の調査員でプライベートに多くの問題を抱えているコンピューターの天才リスベット・サランデルが、それぞれ難題を抱えながら事件解決に向かうサスペンス・ミステリィ3部作で、「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」と続きます。

著者のスティーグ・ラーソンは5部構成にする予定だったらしいのですが、3部まで完成した後に急逝してしまいました。

ただ一応3作目で区切り良く終わっていますので、続編が読めないのは残念ですけどフラストレーションが溜まるような事はありません。

ちなみに1作目の「ドラゴン・タトゥーの女」はこの作品だけで完成している感じですが、2作目と3作目は連続した物語になっています。

1作目はシンプルなサスペンス・ミステリィですが、これが第2作目の「火と戯れる女」になると謀略スパイ・ミステリィのような展開となり、3作目の「眠れる女と狂卓の騎士」ではリーガル・サスペンス風の物語が展開していきます。

3部作なのに味わいが異なるミステリィ・シリーズ、すごいですね。

しかもブルムクヴィストもリスベットも快刀乱麻の活躍で、読んでいてワクワクします。

この作家はおそらくリベラルなフェミニストのようで、全体を通してそういう作者の思想が貫かれていますが、しかしお説教っぽさが微塵も感じられないところがまたスゴイ。

つくづく作者の急逝が残念ですが、スティーグ・ラーソン亡き後、ダヴィド・ラーゲルクランツが続編となる「蜘蛛の巣を払う女」「復讐の炎を吐く女」「死すべき女」の3作を発表して「ミレニアム」は完結しました。ただ管理人はラーソンの3部作で充分満足していますのでそちらは今のところ未読です。