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佐藤正午「カップルズ」の感想です。

佐藤正午「カップルズ」☆☆☆

小さな町で囁かれるうわさ話から始まる7篇の短篇、「好色」「カップル」「アーガイルのセーターはお持ちですか?」「輝く夜」「あなたの手袋を拾いました」「いまいくら持ってる?」「グレープパイン」を収録した緩やかな印象の短篇集です。

倦怠期の夫婦、夜逃げした男、被害者と未亡人、デパート店員の男と女優、手袋をした娼婦、町の絵かき、酒場のホステス、どのうわさ話もどこにでもあるような、ありふれた男女にまつわるうわさ話ですけど、小説家である「私」にはうわさ話が気にかかる。

そんな小説家を語り部にして、小さな町で暮らす人たちの様々な人生の一幕を描いた連作短編集。

大した事件が起こるわけではないし、謎の提示や解決があるわけでもないけど、なかなか味わいのある作品で、読んでいてつげ義春の名作「日の戯れ」の世界を連想しました。

まぁこの作品に描かれているのはもっと普通の日常で、つげ義春の飛び抜けた境地には到達していませんけど、これはこれで淡々と気持よく読めました。