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壷井栄「二十四の瞳」の感想です。

壷井栄「二十四の瞳」☆☆☆

二十四の瞳

日本の児童文学の傑作です。

1954年公開の木下惠介監督の名作映画を始めとして、何度か映画化されたりTVドラマ化されていますので、本を読んだことはなくともタイトルは知っている方が多いのではないでしょうか。

管理人は小学5年生の頃に、この作品を読みました。

ラストシーンで泣いたことを覚えています。歳取って涙もろくなった今と違って、当時は本を読んで泣いたりすることはまずなかったと思いますが、この作品の最後の場面では泣きましたね。

物語の前半は瀬戸内海の小さな島の分校に新任としてやってきた若い女性教師・大石久子が、当時は珍しかった自転車に乗って動きまわったり、先生に興味津々の子どもたちがまとわりついたり、他愛もないいたずらをして先生が怪我をしたりして、若い先生が来ただけで平和でのどかな小さな島が、少しざわついたりする場面が描かれています。

昔気質の人が多い田舎の島にやってきたハイカラな若い女先生と、彼女が受け持つことになるピカピカの12人の一年生の個性豊かで純真な島の子どもたちのふれあいに心が暖かくなるような前半部です。

しかしそういう穏やかな日々は続かず、時が過ぎ先生は島を離れ結婚し、子どもたちはそれぞれの道を歩みだし、そしてあの戦争が始まります。

反戦ということが重要なテーマの一つになっていますが、戦争反対と声高に主張していないだけに胸を打つものがあります。

そして戦争に翻弄されたり、貧しさに流されたりする、同じ学校に通っていた子どもたちの、一人ひとり異なる様々な人生模様が描かれていて、最後は激動の時代を生き延びてきた教え子たちと大石先生とが、ささやかな同窓会で一枚の記念写真を見ながら語り合う場面で終わります。

管理人は子供心に時の流れの無常を感じたり、人の一生とは何だろうと思ったりした記憶があります。

読み継いでいって欲しい日本の名作だと思います。