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和久峻三 「法廷の魔術師」の感想です。

和久峻三「法廷の魔術師」☆☆☆

法廷の魔術師

繁盛している喫茶店「花隈」の女性経営者・佐久間玉恵の愛人で花隈の従業員・小野季夫は、玉恵から「花隈」は事情があって閉店するので、引き続きここで自分の喫茶店を開いてはどうかと勧められる。

玉恵は地元の資産家・今井政吉の愛人で、今井にこの店を任せられていたが、どうやら季夫との浮気がバレて店を取り上げられたらしい。

コーヒーの美味しい淹れ方にも自信があるし、喫茶店経営にも興味がある。

季夫は玉恵と別れ、金策に走り、何とか自分の店のコーヒーショップ「ONO」をオープンした。しかし開店してから二年がすぎ、店の経営も軌道に乗ってきた頃、季夫の元に店舗の明け渡しを求める内容証明が送られてくる。

2年前の開店時に少しでも早く店をオープンしようとした季夫は、不動産屋と弁護士に言いくるめられて、訳が分からないまま賃貸借契約として即決和解を結んだが、そこに巧妙な罠が仕掛けられていた事には気がつかなかった。

このままでは店を取られてしまう。

法律のことなど何も知らない季夫だったが、自治体の無料法律相談で出会った老弁護士の力を借りて裁判に挑む事を決める。


なかなか痛快な話です。

法律に無知な一般人を罠にかけて恥じない悪徳弁護士に対して、引退した老弁護士の助言を借りて、季夫は一人で裁判に挑みます。

悪徳弁護士だけでなく裁判官も、素人が何をするのかな?と思っているところに、店を守るために必死な季夫の反撃があります。

しかも季夫の力になってアドバイスをくれるのは、引退したとはいえ高名な法律家らしい。この老弁護士の季夫に多少の距離を置きながらも親身に相談に乗ってくれる姿勢が、やや斜めの姿勢ながら清々しい感じがします。

本職の弁護士作家が書いただけあって、説得力がある法廷物です。

しかし弁護士は立派な人だというような漠然とした思い込みが一般人にはありますが、昨今は詐欺まがいの事件を起こす弁護士も多いようで、法律に熟知していない一般の人はどうやって自分の身を守るのか、よく考える必要がありそうです。

この小説では主人公は自分を守ることが出来ましたが、現実には理不尽な目に遭って困っている方もいるようですからね。