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スーザン・エリザベス・フィリップス 「あの空に架ける橋」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「あの空に架ける橋」☆☆

あの空に架ける橋

6歳の時にシングルマザーだった母を失い伯母夫婦に引き取られたハニー・ジェイン・ムーンは、伯父が営む小さな遊園地の運営を手伝っていた。

あまり覇気がない伯母や、美人だけど行動的でない従姉妹シャンタルは遊園地には興味を示さないが、ハニーはこの遊園地の目玉のアトラクション大型木製ローラーコースターが大好きだった。

しかしローラーコースターは整備不良で運行を止められてしまい、更に伯父が亡くなった事から遊園地は経営の危機に陥る。

伯母も従姉妹も、16歳の少女ながらしっかり者で気が強いハニーを頼り、ハニーはこの危機から抜け出すために、美しいシャンタルをテレビドラマに出演させようと企てる。

シャンタルは地元の美人コンテストで優勝し、ハリウッドで開かれるオーディションに参加が決まるが、オンボロのクルマでやっとたどり着いたオーディションでシャンタルの審査があっという間に終わり、いい加減な審査に腹を立てたハニーは担当者に怒鳴り込む。

そんなハニーを見た番組の主演者ダッシュは、ハニーこそが自分の娘役にふさわしいとプロデューサーに告げ、ハニーは本人の意志とは裏腹に子役として人気者となっていく。

愛情豊かでありながら、それを素直な形で表現できないハニー。人気が出てくるに従って暴君のように我儘いっぱいに人に接するようになってしまうが、本人はそんな自分がイヤで誰かに諌めて欲しいと願っている。

しかし人気者の彼女に意見することなど誰にも出来ない。

そんな中、ついにハニーの暴走を止めて彼女を救うのは番組を支配するダッシュだった。

最後のカウボーイとして絶大な人気を誇るダッシュは、生まれ育った環境から愛情表現が下手で、結婚しては離婚することを繰り返し、アルコールに溺れてしまう問題を抱えていたが、ハニーは親子ほども歳が離れているダッシュをいつしか男性として意識していく。


貧しい家庭に生まれたハニーの波瀾万丈の人生。

ダッシュとの間に芽生えた深い愛、そして裕福な家庭に生まれ育った美しい男優エリック・ディロンの生き方などが交差して、人間や家族が再生していく物語になっています。

こういう主題は作者の得意とするところですが、円熟期の作品と違って主人公の性格にどこか脆いところがあるように思います。

主人公が悲運を乗り越えて立ち上がり、雄々しく生きていく姿は、小説としては良いと思いますが、ロマンス小説として見ると複雑になりすぎている気がします。

でも管理人は好きですけどね。