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スーザン・エリザベス・フィリップス 「きらめきの妖精」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「きらめきの妖精」☆☆

きらめきの妖精

ロシア貴族の血を引くフランスの大富豪と美貌のアメリカ人女性ベリンダの娘として生まれたフルールは、女優になる事を夢見ていた若かりしベリンダが、老境に差し掛かったハリウッド・スターのエロール・フリンと出会って出来た子供だった。

フルールが実の子ではないと知った父親の差配で、16歳になるまで修道院で育てられたが、その後は娘を溺愛する母ベリンダと共にベリンダの故郷アメリカに渡り、ニューヨークで新鋭モデルとして華々しいデビューを飾り一躍時の人となる。

女優になるのが夢だったベリンダは叶わなかった夢をフルールに託し、演技の才能がないと自分で認めるフルールを、野性的な人気俳優ジェイクが脚本を書き主演する映画のヒロインとして送り込む。

始めのうちは無愛想なジェイクに怯むフルールだったが、誰にも公平な態度で接し真摯に映画制作に挑む彼の人柄を知るにしたがってジェイクに恋をしてしまう。

しかしジェイクは19歳の無垢な乙女としてフルールを見ていた。


作者が1980年代に発表した初期の作品を焼き直したロマンス小説です。

作風が今とは少し違っていて、特にベリンダがスターを夢見て片田舎から上京した1950年代を描いた前半部は、軽妙な掛け合いもなく少し生真面目な雰囲気が漂っています。

いつまでたっても夢見る少女のように軽薄なベリンダと彼女に引っ張りまわされるフルール、暗黒街の顔役のような佇まいを感じさせる冷酷な父親、ベリンダを嫌う祖母、ベリンダに愛されなかった異父弟ミシェルなどの、家族それぞれの描写が良く出来ています。

義父を本当の父親と信じ込み、なぜ自分のことを愛してくれないのか考え込むフルールが、弟のミシェルに対して両親の愛情を一身に浴びていると誤解して冷たく当たるあたりが少し切ない感じです。

ジェイクと決別した後、ベリンダからも義父からも独り立ちして、ヨーロッパを転々としながら苦労を重ねて、一人の自立した女性として成長していくフルール。

NYに戻ったフルールとミシェルの和解や、再会したジェイクとの新しいロマンスが描かれる後半は、この作者らしい流れで描かれています。