面白い本を探す

スーザン・エリザベス・フィリップス 「その腕のなかで永遠に」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「その腕のなかで永遠に」☆☆

その腕のなかで永遠に

女優を目指していたものの夢破れ、腹話術師として生活していたアニー・ヒューイットは、母マリアが遺産として残したメイン州の小さな島ペレグリン島にあるムーンレイカー・コテージに向かう。

がんに侵されたマリアの面倒を見ているうちに借金まみれとなったアニーは、母が死ぬ間際に呟いた、とても貴重なものがコテージにあるという言葉を拠り所にしていた。

マリアはエキセントリックな趣味の持ち主で、芸術家たちのパトロンを自認し、在りし日のコテージには多くの若い芸術家たちが集まっていたものだった。

その中には後日名を馳せた芸術家もいるかもしれない。そうした芸術家が残した極めて価値の高いものがひょっとしたらあるかもしれない。

ムーンレイカー・コテージは母が前夫エリオット・ハープと別れる際に譲り受けたものだったが、譲渡の条件として毎年60日間連続してコテージに滞在する事が義務付けられていた。

この条件は遺産を相続したアニーにも引き継がれ、アニーはあまりよい思い出のないコテージを本当は売ってしまいたいのだが売る事は出来ない。

母親の看病で負った借金を抱え、収入の道もなく、更に体調不良で咳き込む日が続く中、アニーは極寒のペレグリン島に何とか辿り着いた。

しかしこの島で、アニーは最も会いたくない人物、エリオットの息子テオと再会してしまう。

母とエリオットの結婚で島に住んでいた10代の頃、アニーはテオに恋をしたが、テオの悪戯と呼ぶにはあまりに危険な行為で命の危険に晒されたことがあった。

テオはどこか精神的におかしい。そんなテオに再会したアニーの周囲で不可解な事件が発生し、始めのうちはテオを疑っていたアニーもテオに頼らざるを得なくなっていく。

そうしているうちに見えてくるテオの真実の姿・・・。アニーは再びテオに惹かれていくのだが。


前半部分はゴシック・ホラーっぽいと訳者あとがきにありますが、管理人にはS.E.フィリップスらしい舞台設定と展開だと思えました。

不運に遭遇して失意のうちにあるヒロインが、最悪の状況の中で持ち前のユーモアと芯の強さを発揮して困難に立ち向かい、そんなヒロインを陰に陽に助けるヒーローが現れ、二人の周囲の人たちがいつの間にか二人を応援するというのが基本のロマンス小説です。

主人公のアニーが人のよい女性というのもお決まりですが、彼女は優秀な人形遣いで、困難な事態にあって人形たちが人格を持っているかのように彼女に話しかけてくる辺りが中々ユニークです。

ただ物語の後半になると人形たちの出番が減っていくのが少々残念。

それでも「自由な秘密」という言葉とともに、大切な場面では活躍しています。

久しぶりにスーザン・エリザベス・フィリップスらしい作品を読んだ気がします。良かったです。