会社を早期退職して探偵事務所を開いた中年の私立探偵・仁木順平と、その可憐な助手・市村安梨沙が、日常生活で起こった些細な事件の謎解きをするミステリィ「螺旋階段のアリス」の続編となる連作短編集です。

殺人事件も傷害事件も巨額の盗難事件もないけれども、登場する人物はみなさん極端な人たちが揃っていて現実感は全く感じません。

それでも、このおっとりとした雰囲気が管理人は好きです。

何といっても、私立探偵なんて全く向いていないんじゃないかなと思わせてくれる人の良い仁木順平の性格と、とても現実離れした謎のお嬢さん市村安梨沙の二人のコンビがいい。

早期退職優遇制度を利用してサラリーマンから私立探偵に転身した仁木順平の、何とも恵まれた境遇がまたうらやましいですねぇ。

生活のことなど顧みずに昔から憧れていた探偵になるなんて、相当浮世離れしていますけど、そんな順平に理解を示してくれる素敵な奥さんも登場して中年の夢物語が心地良いです。

本来は謎の美少女安梨沙が主人公のお話なんでしょうけど、何だか中年男性順平の思いや環境が強烈すぎて、そちらの方が気になってしまいました。