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加納朋子「コッペリア」の感想です。

加納朋子「コッペリア」☆☆☆

コッペリア

幼年期のトラウマを抱え人付き合いが苦手な青年と、離婚した母と二人の姉の生き方に疑問を感じて、ついついシニカルな態度をとってしまうアングラ劇団の女優。

エキセントリックな性格ゆえに不器用な生き方しか出来ない天才女性人形師と、彼女の作る人形に惚れ込み、スポンサーのような立場にいる、良い人だけど無神経なボンボン男性。

加納朋子は登場人物の造形が上手だと思いますけど、この作品も現実にはあまり居そうにない人たちを巧みに交差させて、そこから生まれる愛の物語を描いています。

少し複雑な物語で、やや暗い雰囲気で展開していきますが、上手に貼られた複線が効いていて、終盤には巧みな山場を迎えて、加納作品に多いそこにいるだけで安心感を感じる好人物こそ登場しませんが、後味は良い作品だと思います。