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加納朋子「カーテンコール!」の感想です。

加納朋子「カーテンコール! 」☆☆☆

カーテンコール!

お嬢様大学としてそれなりに評価されていた萌木女学園は、残念ながら経営難で閉校が決まっていたが、その最後の卒業生となる学生の中に、単位不足で卒業が出来ない学生が数名いた。

4月になれば大学は存在しなくなり、学生たちは中途半端に大学中退ということになる。

萌木女学園の理事長・角田大造は、そうした学生たちを救済するため、半年間の補修を提案する。

但し、全員が学園敷地内にある寮に入り、外出もネットも面会も全て禁止された団体生活を送るのが条件だった。

そうした女学生たちの、それぞれワケありの事情と、共同生活を送るうちにそれぞれが成長する姿を描いた6篇の連作短編集です。


「砂糖壺は空っぽ」の主人公は、LGBTからコミュニティ障害になった少女・綾部桃花の物語で、率直に辛かっただろうなぁと思いました。

「萌木の山の眠り姫」は、寮で同室となった、どうしても朝起きられない梨木朝子と、ナルコレプシー患者の有村夕美の物語。

「永遠のピエタ」は、BL好きのオタク少女でついつい夜更かしをしてしまう金剛真美の物語。

「鏡のジェミニ」は、摂食障害で痩せぎすの細井茉莉子とぽっちゃりな小山千帆の物語。

「プリマドンナの休日」は、なぜこんな子が留年?というような出来過ぎの優等生・喜多川菜々子と、ジャーナリスト志望の矢島夏鈴の話で、前の4作の主人公たちがそれなりに深い事情があった事に比べれば軽めですけど、でもよく考えれば喜多川菜々子の事情も奥が深いかな。

最終話の「ワンダフル・フラワーズ」は、自殺願望がある清水玲奈の物語と今までのまとめのような話に、角田理事長のつらい思い出が語られて、この短編集のテーマが引き締まったような感じでした。

生きていくのがつらくなるようなことがあったら、無理に頑張ろうとしなくても良いよ、人を頼っても、逃げても良いんだよというのは、確かに大事なことですよね。