トム・ルッツ 働かない -「怠けもの」と呼ばれた人たち ☆☆☆

働かない -「怠けもの」と呼ばれた人たち

大学進学を前にして著者と同居を始めた息子が、カウチに横たわっていつまでもダラダラしている事に怒りを覚えだした著者が、人はなぜ働かない人々に対して怒りを感じるのか興味を抱いて調べ始めたという、出だしから面白い著作です。

アメリカ・ピューリタンの倫理観として、労働というのは高い価値を認められているけど、本来近世になるまで労働とは労苦であり、必ずしも尊い概念とばかリは言えなかった。

往々にして勤勉を説く人間が怠け者で、自分を怠け者と定義する人が実際には過剰なほどの労働をしていた。

そういうような事を始めとして、働く事の価値観の変転などについて事例を引きながら考察しています。


管理人は本当のところ仕事が好きなわけではありません。

じゃあ仕事をせずに何かもっと有意義なことをしたいのかと問われればそれも違う。立派な怠け者です。

その事実にある日気がつきましたが、しかし怠け者というのは、やはりネガティブなイメージですから、人に向かってオレは怠け者だ!それがどうした!とは言いにくい。

ましてや妻子を養う身となれば怠けてもいられませんし、働くことが苦痛でも働かざるを得ない。

しかし自分は本来怠け者なのに、勤勉なふりをするのにも疲れますし、何より怠け者の自分が情けなかったりします。

そんな風にちょっと自分の中にモヤモヤとしたものがありましたが、この本を読んで、そうか人間は本来怠け者なんだとスッキリした気持ちになりました。

怠け者である自分の存在自体がごく自然なことなのだと思うと、何となく勇気づけられる気がします。

しかし怠惰である事はそんなに悪い事でもないかもと思う一方で、「ものぐさはサビと同じで、労働よりもかえって消耗を早める」と言う箴言にも説得力を感じます。

現実として働かざるを得ない管理人としては、労働に価値を見出す事も必要だろうと思います。

著者も一方に肩入れするような姿勢はとらずに、さまざまな事例を引いて怠惰に付いて語るのみです。こういう姿勢がまた好ましい著作です。

それにしても、怠惰理論とか、人は暇である時のみ自由であるとか、閑者生存の法則だとか、ヒマ人には面白い事を考える人がいるものですね。


このページの先頭へ