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佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」の感想です。

佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」☆☆

接触恐怖症で他人に触られることも触ることも苦手な20歳の大学生・富山一志は、トラブルを起こした事から大学を休学し、世田谷の実家を出て、金沢八景のアパートに一人住まいをしながらコンビニでアルバイトの日々をおくっていた。

そんな富山の唯一の楽しみは、金曜深夜に放送しているアルコ&ピースのオールナイトニッポンを聴いて、思いついたネタをラジオネームで投稿すること。

他人とのコミュニケーションが苦手な富山は、これからの自分が分からない。コンビニで接客もするけど、常連さんと親しくなるというような事もダメだし、女性だと同僚の顔もマトモに見られない。

このコンビニのバイトのリーダー格の鹿沢は3つ年上ながら、実にそつなく全てをこなし、富山にもフレンドリーに接してくる。どうもバンドをやっているらしい。

そんな富山の色が抜け落ちたような日々が、コンビニ客としてやって来た変わり者の女子高生・佐古田愛と知り合ったことから、徐々に変化をしていく。


深夜放送のリスナーを主人公にした、一人称で描かれた、山本周五郎賞受賞の青春小説です。

ハガキ職人と呼ばれるラジオネームで投稿して、番組でそれを読まれることを生きがいにしているような若者の青春ストーリーと言った感じでしょうか。

大きなイベントがあるわけではありませんが、主人公がコンビニの先輩鹿沢や、ハガキ職人の佐古田、高校時代からの友人永川などと行動をともにしているうちに、少しずつ変わっていく姿が自然体で良い感じです。

オールナイトニッポンとか深夜放送とか懐かしいような感じですけど、今でもリアルにやっているんですね。まぁ視聴者もいるだろうし、当たり前か・・・。