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山田太一 「飛ぶ夢をしばらく見ない」の感想です。

山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」☆☆☆

飛ぶ夢をしばらく見ない

もうすぐ48歳になろうとする人生に疲れた中年男・田浦が骨折で入院した時に、同室になり衝立越しに会話を交わした女性は40代か30代か・・・。

顔が見えないその女性と会話を交わしているうちに、女性は「私を犯して下さいますか?」と言い出す。

衝立越しに淫らな会話をする男と女。

しかし翌朝になって、男が別室に移動する際に見かけたその女性は白髪の老女だった。

その後、退院した田浦に会いたいと連絡をよこした老女・睦子は、和服を着こなす40代の美しい女性の姿になって現れる。

若返ったと語る彼女と一夜の情事をした2ヶ月後、田浦が再会した睦子は30代初めにしか見えない姿になっていた。


会うたびに若くなっていく女性と、くたびれた中年男性との不思議な愛を描いた物語です。

会うたびに情事を重ねる関係の二人ですけど、そういう結びつきだけではない、もっと深い所で惹かれ合うものがあり、また物語が田浦の一人称で書かれているために心情が分かりやすい。

20代、10代後半はまだ良いけど、睦子は会うたびに若返り、徐々に子供になっていく。

それでも二人は肌を合わせたりして、やはりセックスだけではない結びつきがあって、そこに深いものを感じます。

心に染みるものがある大人のファンタジィです。