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ウェン・スペンサー 「ようこそ女たちの王国へ」の感想です。

ウェン・スペンサー「ようこそ女たちの王国へ」☆☆☆

ようこそ女たちの王国へ

生まれてくる子供の男女比が1:20くらいの近代ヨーロッパ風の社会が舞台。

この世界では姉妹が一人の夫を共有して家族を構成し、女性が世界を統治し、女性が主な労働力を供給し、女性が戦士として戦います。

人口の5%程度しか存在しない種馬のような男性は財産扱いされ、外出すら一人では出来ずに屈強な姉妹が常に周囲をガードしている。そして結婚適齢期の16歳になると、他家の同じような境遇の男性と交換されるか、又は売られていきます。

さらに結婚しても4~5人、またはもっと沢山の妻を満足させるために頑張らなくちゃいけない。とてもハーレムどころの世界では有りません。長生き出来ませんね。

そんな世界の地方の農場主で、元軍人一族ウィスラー家の長男ジェリンはもう直ぐ16歳になる。誕生日を迎えたら、どこかの家の花婿になるはず。

そんなある日、屈強な姉たちや母たちが留守の間に、謎の一団に襲われ傷ついた女性兵士を、妹と一緒に救助し、家の中に運び入れる。

ところがその女性兵士は実は王女のひとりで、しかも妹を探しに来た王国の跡継ぎ王女レンとジェリンは恋仲になってしまう。

身分違いの叶わぬ恋のはずだったが、ウィスラー家が昔行方知れずとなった王子の家系だと知ったレン王女は、何とかジェリンを夫に迎え入れようと考え城に招待する。

しかし今王国内では、現王家を転覆させようとする陰謀が着々と進みつつあり、レン王女の元に招かれたジェリンとウィスラー家の姉たちもまた、その陰謀の渦中に巻き込まれていく。


邦題が子供っぽくて、表紙絵も軽すぎますが、極端に女性が多い架空の世界を舞台にした、ユニークな設定のロマンチック・ファンタジィです。

男女の役割が逆転した世界で、女は強く逞しく、人数の少ない男は過保護に育てられて、ロクな教育も受けられず、何も出来ず何も知らない存在と見做されています。

王国の城内で、男だから頭が悪くて何も出来ないと思われているジェリンが発揮する多彩な才能や活躍に、周囲が唖然とする様がなかなか可笑しい。

そんなジェリンに恋するレン王女も凛々しいし、ジェリンの妻となる他の王女たちも愉快で、優秀な戦士であるジェリンの姉たちも含めて登場人物がなかなか魅力的です。

王国に渦巻く陰謀などのミステリチックな要素もありますけど、ベースは王国の王女たちの婿取り物語みたいな話で、全体的に明るい雰囲気が楽しい作品です。