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ウェン・スペンサー 「ティンカー」の感想です。

ウェン・スペンサー「ティンカー」☆☆☆

ティンカー

21世紀の終わりに中国が盗窃した技術で異次元間転移装置ハイパーフェーズを開発するが、これが中途半端な装置で、なぜかアメリカのピッツバーグだけが異次元にある魔法が支配する平行世界エルフホームに転移してしまった。

元々が盗窃した技術なので、中国にも装置の原理を理解している人間が存在しないため、この転移現象は元に戻す事が出来ない。

転移装置がシャットダウンする月に一度のシャットダウン・デーにだけ、ピッツバーグは地球側に戻る。

人工授精で生まれた18歳の天才少女ティンカーは、本名をアレクサンダー・グラハム・ベルといい、実はこの転移装置の原型を考え出した科学者の娘だった。しかしその正体は誰にも知られず、従兄弟と二人でエルフホームに転移してしまったピッツバーグでスクラップ業を営んでいる。

そんなティンカーが、ある日魔法の狛犬に襲われたエルフの貴族ウインドウルフを助けたことから、平行世界をまたぐ陰謀が明らかになって行く。


物理や数学に関しては天才でも人生経験の少ない純な娘ティンカーが、エルフホームで極めて大きな権力を持つウインドウルフを救って、良く知らないエルフの慣習に戸惑いながら地球とエルフホームを救う為に活躍すると言うアドベンチャー・ファンタジィで、なかなか面白いSF小説です。

物資不足に悩むエルフホームのピッツバーグで、スクラップを修理して使えるものを生み出す技術の持ち主で、実は転移装置の原理が何となく分かっているただ一人の人間なのに、自分の重要性が今ひとつ分かっていなくて、女の子らしくデートしたいと考えていたり、美しいウインドウルフに密かに憧れていたりする少女ティンカー。

ティンカーに救われたウインドウルフもティンカーの事が気になっていて、エルフホームの王子のような地位の彼が、異種族のティンカーを自分の伴侶にしようと考えています。

ちょっと風変わりだけど可愛らしくて前向きな女の子が、けっこうスゴイ事をしでかすという、ユニークな発想とスピード感がある魅力的なSFでした。