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漆原友紀 「蟲師」の感想です。

漆原友紀「蟲師」☆☆☆

蟲師

この世にいろいろな怪異を引き起こす目には見えない生命体「蟲(むし)」。

「蟲」はその性質から自分の生存のために様々な現象を起こし、時にはそれが他の生物に害を与え、時には大いなる恵みを与える。

この作品はそういう「蟲」と、「蟲」が原因で起こる怪異現象を解明し治療を行う架空の職業「蟲師」の青年ギンコを主人公にした連作和風ファンタジィ・コミックです。

舞台になるのは明治の初め頃の日本で、まだ不思議なモノの存在に人間が然程の違和感を持たずに生きている世界です。

1話1話に現れる「蟲」たちが起こす現象は、時には悲劇になり時には人間を救います。

怪談・奇談のような少し懐かしくて、少し怖くて、不思議な世界がゆったりと展開されていきます。

ここで描かれる「蟲」は作者の創作ですが、管理人が20歳くらいの頃に友人から「疳の虫って本当に居るんだ」という話を聞いたことがあります。

比喩としての疳の虫は知っていましたが、友人に言わせると指先から白い煙のような糸のようなものが出てくるんだとか。

管理人自身がそれを見たわけではないので、正直言えば半信半疑でしたが、でもそういう事を友人はまことしやかに話していました。

また管理人の母は狐憑きを見たことがあるとかで、「あの頃はそういう事が本当にあったのよ」とよく話していました。

真偽の程はともかくとして、そういう世の中には不思議な事もあるんだという事が、ごく普通に語られる時代が昔は確かにあって、そういう時代には本当にそういう怪異現象があったのかもしれないと、歳を重ねた今になると思ったりします。

またそういう社会の方が、何に対しても敬意を抱けない社会よりも良い社会という気がします。

そういう風に思うと、この作品で描かれる世界はとても多様性にあふれて美しく、読んでいて心が満たされるような気がします。

この作品はアニメ化され、また大友克洋監督、オダギリジョー主演で実写映画化もされています。

アニメは見ていませんが、実写化された映画は見ました。

映画も悪くはないけど、やっぱり原作コミックの方が味わいがありましたね。