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ロイス・マクマスター・ビジョルド 「影の棲む城」の感想です。

ロイス・マクマスター・ビジョルド「影の棲む城」☆☆☆

影の棲む城

若かりし頃、神に宿られた経験を持つチャリオンの国太后イスタは、大いなる存在に触れるという人には語れぬ経験から一時は錯乱状態となり、またそれにより人には感知できないモノを感じられる力を持ってしまった。

元国主の夫はとうに亡くなり、成人した娘がチャリオンの国主となっているが、イスタは精神が不安定な女性と見られ、故郷の城の中で隠者のようにひっそりと暮らしている。

まるで幽閉されているかのような日常にうんざりしたイスタは、数少ないお供を連れて巡礼の旅に出たが、その行き先でチャリオンの命運をかけた大きな事件に巻き込まれてしまった。


2004年のヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞したファンタジィ小説です。

五柱(父神、母神、御子神、姫神、庶子神)の神々が住まう国を舞台にした「五神教シリーズ」三部作の第2作目になる異世界ファンタジィで、同じ世界での王位継承を巡る陰謀と神の降臨が一つのテーマになっていた「チャリオンの影」の続編にあたります。

この作品だけ読んでも充分に面白いとは思いますが、登場人物が多少かぶりますし、世界観への慣れもあるので、1作目を先に読んでおいたほうが楽しめると思います。

ただ管理人はこちらの作品を先に読んでしまいましたが・・・。

それが関係したのかどうか。正直言えば「チャリオンの影」の方が、主人公の造形もよく出来ていると思うし、波乱万丈の物語で管理人は好きです。

神々の力が溢れる世界の中で、五神教を信じる人々と庶子神を神と認めず四神教を信じる人々の宗教的な対立が描かれていて、なかなか興味深い作品です。

主人公が現女王の母親にあたる中年女性という設定で、その位の年代の女性が主人公の冒険ファンタジィは少し珍しいですけど、年齢が幾つになろうとも恋をして世界を守るために戦うというのは、かえって今の時代に合っているように思います。

管理人にはビジョルドはSF作家という印象が強かったのですけど、このシリーズを始めとしてファンタジィでも面白い作品を書いていますね。

五神教(チャリオン)シリーズ

  1. チャリオンの影
  2. 「影の棲む城」(本書)
  3. 影の王国
  4. 魔術師ペンリック
  5. 「魔術師ペンリックの使命」