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カレン・ローズ「暗闇に抱かれて」の感想です。

カレン・ローズ「暗闇に抱かれて」☆☆☆

暗闇に抱かれて

何者かの暗示を受けて自宅アパートの窓から飛び降り自殺を遂げた女性は、美貌の精神科医テス・チッコテッリの患者だった。

事件を担当する刑事エイダン・レーガンは、高級車で現場に駆けつけ、患者自殺の報に表情も変えずに冷静な態度でいるテスに不信感を抱く。

そもそもテスと会う前から、エイダンは彼女に反感を抱いていた。

少し前に幼い3人の少女と警察官が異常者に惨殺されるという事件が発生し、その裁判で弁護側証人となったテスは犯人の精神障害の状態を述べ、刑事責任を問えない事を証言した。

それ以来、彼女は仲間を殺されて怒る全ての警察官の反感を買い、警察は家族と同じだと思っているエイダンも、テスに冷たい目を向けていた。

自殺現場には被害者が自殺を強要されたような形跡があり、そこからテスの指紋が見つかる。

これは自殺に見せかけた殺人事件ではないかとテスを疑いだすエイダンだが、捜査を進めていくうちに、またもやテスの患者が同じような状況の中で自殺する。

これは何者かがテスの犯行と思わせる手口で行った事件だ。そう確信したエイダンはテスと協力して捜査をすすめるが、行動をともにするうちにテスの冷静な態度の裏に隠された他者への同情心と傷つきやすい心に気がつく。

繊細なテスに惹かれだすエイダンと、エイダンの逞しさの中にある優しさに強く惹かれていくテス。しかし犯人の異常な行動は徐々にエスカレートしていき・・・。


RITA賞を受賞した「誰かに見られてる」の主人公エイブ・レーガンの弟エイダンを主人公にした、良く出来たロマンチックなサイコ・サスペンスです。

実は管理人は、RITA賞受賞作よりもこちらの作品の方が好きです。

動機や犯人の行動には無理があるといえば無理がありますけど、ロマンスとミステリィのバランスがうまく取れた小説だと思います。

精神科医という職業から自分の感情を表に出さないテスの繊細な内面に気がついた事から彼女に強く惹かれていくエイダンが自然な感じで良いですね。

ロマンス小説特有の甘い甘い話を期待している人には物足りないかも知れませんが、管理人は好きな作品です。