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宮部みゆき「火車」の感想です。

宮部みゆき「火車」☆☆☆

火車

職務中に負った怪我で休職中の刑事・本間俊介は、遠縁の銀行員・栗坂和也に頼まれて、和也の婚約者・関根彰子の行方を捜すことになった。

クレジットカード作成時に自己破産が原因でカード審査に落ちた彰子は、何故か和也の前から突然姿を消した。

彰子の勤務先、彰子の自己破産手続きに関わった弁護士などを訪ねて彰子の足どりを調査しているうちに、俊介は和也の婚約者の関根彰子と自己破産した関根彰子が別人であることを知る。

姿を消した女性が関根彰子でないとしたら、本物の関根彰子はどこに居るのか?また消えた女性の正体は?

ただの失踪事件と言えなくなった事件の謎を追う内に、徐々に明らかになっていく彰子失踪の理由と彼女の正体。果たして彼女は今どこにいるのか・・・。


ムリな借金に翻弄される人たちの苦難を描いて第6回(1993年)山本周五郎賞を受賞した格調あるミステリィ小説です。

うーん。借金でこれほど人生を狂わすことが今の世の中で有り得るんだろうか?というのが、読み終えた時の素直な実感でした。

しかし勤勉で真面目な人ほど、こうした事から人生を狂わせてしまう矛盾があるのは事実だと思うし、そういう点ではリアルに怖い話です。

宮部みゆきは構成や表現が実に上手ですよね。

読み進むうちに物語の中にグイグイと引き込まれてしまいます。

犯人自身は全く語らず物語を進行させているところなどもホントに上手で、この作品の効果を上げていると思います。

またラストシーンなんかは映画のワンシーンのようで、映像が浮かんできて何だかゾクゾクしました。