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ピエール・ルメートル 「その女アレックス」の感想です。

ピエール・ルメートル「その女アレックス」☆☆☆

その女アレックス

美しい独身の非常勤看護師アレックスは、深夜にレストランから自宅に帰る途中で、謎の大男に襲われてバンに連れ込まれ、廃屋の地下室で素っ裸にされた上に狭い木箱で作られた檻に閉じ込められる。

女性が誘拐されたとの通報を受けたパリ警視庁犯罪捜査部部長のル・グエン警視は、過去の誘拐事件のトラウマを引きずっているカミーユ・ヴェルーヴェン警部に事件の捜査を命じた。

犯人どころか被害者の身元すら解らない中で、事件の捜査を開始したカミーユだったが捜査は難航する。

一方で檻に閉じ込められたアレックスは、男に誘拐した訳を尋ねるが、男は「おまえがくたばるのを見たいからだ」とだけ告げて姿を消した。

檻に幽閉され衰弱していくアレックスだったが、地下室にねずみが現れたのを見て男の意図を悟り脱出を図る。


あらすじに何を書いてもネタバレになるような、そんな類いのサスペンス・ミステリィで、2014年の日本の翻訳ミステリィの話題を独占したというのも良く分かります。

謎が謎を呼び、更に謎の女性アレックスがすごすぎて、どこかスティーグ・ラーソンの「ミレニアム」のリスベットを連想させてくれるヒロインです。

落とし所をどこにするのかと思いながら読みましたが、ラストもなかなか見事で感嘆しました。

事件を追う場面も見事ですが、トラウマとコンプレックスを抱えて生きているカミーユの思いと、彼の部下たちとの絆も上手く描かれていて、単なるサスペンス以上のものを感じます。

テーマも奥が深く、確かにこの作品は傑作です。

尚、この作品の前日譚になる「悲しみのイレーヌ」も邦訳が出ていますが、両作品とも未読であれば、「悲しみのイレーヌ」の方から読むことを強くお勧めします。