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スーザン・エリザベス・フィリップス 「あの夢の果てに」の感想です。

スーザン・エリザベス・フィリップス「あの夢の果てに」☆☆☆

あの夢の果てに

アメリカン・フットボール選手とその関係者を主人公にした「シカゴ・スターズ」シリーズの第4作目。

第1作目の「あなただけ見つめて」第3作目の「あなたがいたから」に続いて1999年のRITA賞((Best Contemporary Single Title)を受賞したロマンス小説で、「あなたがいたから」の主人公キャル・ボナーの弟で元獣医のゲイブ・ボナーを主人公にして、前3作とは違って直接フットボールとは関係していない二人の物語になっています。


信者からの浄財を抱えて逃走中に飛行機事故で死んだいかさまテレビ伝道師の未亡人レイチェルは、幼い一人息子エドワードと二人で教団の本拠地があった田舎町にやって来た。

しかし乗っていたボロボロのクルマは開業準備中のドライブインの近くでエンストし、冷酷なドライブイン・オーナーはレイチェルたちをあからさまに邪魔にした態度を示す。

エドワードを叱ったオーナーにけんか腰の態度で挑んだレイチェルだったが、たまたまそのドライブインで求人している事を知ると、自分を雇うようにオーナーに掛け合い勝手に仕事を始めてしまう。

ドライブインのオーナーで元獣医のゲイブ・ボナーは、数年前の交通事故で亡くした妻子の事が今でも忘れられず、世捨て人のようになって厭世的な日々を過ごしていたのだが、子供のため自分のことを顧みずに夢中で働くレイチェルの姿を見て、些細な事で言い争いをしているうちに心が安らいでいく事に気づく。

テレビ伝道師の妻として夫から広告塔に使われていたレイチェルは、贅沢な妻のせいで伝道師の夫が堕落して不正を働いたと噂され、伝道師に騙されていた町民たちはレイチェルを憎んで仕返しをしたいと思っていた。

陰に陽にレイチェルに対して嫌がらせをする町の人々だったが、町の有力者ゲイブの元で働き出して生活の目処がたったレイチェルにはある目的があった。

その目的のために意地を張るレイチェルと、未だ癒えぬ心の傷を持つゲイブは、いつしかお互いに惹かれあっていくのだが・・・。


レイチェルは本来素直で心根が優しく、物腰も柔らかな女性だったのに、一人息子のエドワードが肺炎に罹り死にそうになった事を乗り越えてからは、他人に対して攻撃的な態度に出てしまう。

一方でゲイブは妻子の死を嘆くあまり、人生に絶望して何もかもがイヤになり、毎晩死ぬ事を夢見ていた男。

ゲイブを心配する両親や兄弟たちのおせっかいで、仕方なく生まれ故郷の町に戻ったものの、毎晩眠れぬ夜を過ごしていた。

そんな二人が出会い、初めは反目し合いながらも、徐々にお互いを認めて惹かれ合っていく姿を描いていますが、エドワードに死んだ自分の息子の姿を重ねて、ついつい彼に辛く当たってしまうゲイブの苦悩なども描いているところが、単純なロマンス小説に奥行きを与えていると思います。

またレイチェルに反感を抱くゲイブの弟で牧師のイーサンと、イーサンの幼馴染で彼を渇望する女性クリスティとの恋も描いて話にふくらみを持たせています。

登場する人物の性格が少しひねているところや気の利いた会話が楽しい作品です。

「シカゴ・スターズ」シリーズ。

  1. あなただけ見つめて
  2. ロマンティック・ヘヴン
  3. あなたがいたから
  4. 「あの夢の果てに」(本書) 
  5. 湖に映る影」
  6. まだ見ぬ恋人
  7. いつか見た夢を