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ダン・シモンズ「雪嵐」の感想です。

ダン・シモンズ「雪嵐」☆☆☆

雪嵐

タフで非情で熱い元私立探偵ジョー・クルツが活躍するハードボイルド・アクション小説です。

前作「」もそうでしたが、込み入った状況を巧みにちりばめて、尚且つ分かりやすい物語に組み立てていくダン・シモンズの技量は大したものです。


今作ではクルツを狙うマフィアの跡継ぎと、その依頼を受けて襲い掛かる殺し屋たち、買収された悪徳刑事、更にクルツに人探しを依頼する世界的なヴァイオリニストが登場します。

ヴァイオリニストの話によれば、20年前に彼の娘をレイプした後、自分の妻子を殺害し自殺したはずの男が、生きのびてこの町で暮らしていると言う。

本当だったら相当な難敵になるはずのマフィアさえも霞ませてしまう、この殺人犯の正体がまたすごい。

善玉悪玉を超えて登場人物の組み合わせが絶妙です。

そしてクルツがどんな風にして四面楚歌の状況を打破していくのか、その流れが見事です。

唯一残念というか違和感があるのは、このクルツという男はここまで用心深くて頭も良いのに、何でまたつまらない犯罪を犯して刑務所に行ったんでしょうか?少し不思議です。

とくに内容が濃いわけでもないのに、読んで胸がスカッとする作品で、とても面白いハードボイルド・アクション小説です。