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ジョン・グリシャム「処刑室」の感想です。

ジョン・グリシャム「処刑室」☆☆☆

処刑室

KKKの団員だったサム・ケイホールは、ユダヤ人弁護士の事務所に爆弾を仕掛け、弁護士の双子の息子を殺害したとして死刑判決を受けた。

事件から20年が過ぎたある日、サムの執行停止処分が解かれ、いよいよ処刑される事が決まった。

死刑を猶予させる為に与えられた時間は僅かに4週間。弁護士になってまだ間がない新人アダム・ホールがサムの死刑執行停止を担当する事になる。

実はアダムの父エディは、サムが犯した行為を恥じて自殺したサムの実の息子であり、アダムはサムの孫だった。

果たしてアダムはサムの刑の執行を止めることが出来るのか。


とても良かったです。感動しました。

解説にも書いてありましたが、デビュー作「評決のとき」に近い感じの社会派ミステリィです。

グリシャムの作品はテンポ良くどんどんと話が展開して、キレの良い作品が多いですけど、「処刑室」はどちらかと言えばスローペースで展開します。

アメリカ南部の人種差別的な社会環境、その地で育ち偏見の影響を受けざるを得ない無学な人々。そうした中で罪を犯した人間の人生を、なんと残酷に、しかし感動的に書いていることでしょう。

アダムがケイホール家の過去、即ち自分自身の先祖の事を知ろうとする姿に主眼を置いて物語は進行します。

アダムに過去を語るのは叔母のリーですけど、リーも父親のサムが起こした事件により心に深い傷を負い、アル中になっています。

人を不幸にしてしまう無知と偏見。死刑囚となり刑務所内で考えを重ね、自分の今までの愚かしい行動に嫌悪感を抱くようになるサム。

作品を読む前は、無実の死刑囚である祖父の汚名を晴らすために、優秀な孫が獅子奮迅の大活躍で真実を明らかにして、祖父は無事に釈放されてメデタシメデタシとなる話だとばかり思っていましたが全く違う話でした。

色々と考えさせられる作品です。