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伊坂幸太郎「マリアビートル」の感想です。

伊坂幸太郎「マリアビートル」☆☆

マリアビートル

アル中の元殺し屋・木村は、まだ6歳の一人息子・渉をデパートの屋上から突き落とした性悪の中学生・王子に復讐するため、王子が乗車しているという東北新幹線に乗り込んだ。

しかし一見するとおとなしい優等生のような王子は狡猾な少年で、実は木村にわざと情報を流しておびき寄せ、スタンガンで木村を失神させて拘束し、自分の言うことに従わないと、病院で寝たきりになっている渉の命はないと脅す。

盛岡で暮らす暗黒街の黒幕・峰岸に依頼されて、都内で監禁されていた峰岸のボンボン息子を救出した「蜜柑」と「檸檬」の二人組は、ボンボンと誘拐犯から取り戻した身代金の入ったトランクを持って東北新幹線に乗り込むが、トランクが何者かに奪われてしまう。

運の悪い仕事人「天道虫」は、仲介人を通して請け負った新幹線の中から指定されたトランクを運び出すという仕事に運悪く失敗する。

疾走する新幹線の車内で、自分の身を守ろうと奮闘する殺し屋たちと、悪意の塊のような中学生が、騙し騙されのドタバタを繰り広げていく。


グラスホッパー」に続く、暗黒街に生きる殺し屋たちの奇怪な騒動を描いた、疾走感のあるエンターティメント小説です。

定番とも言えるような倫理観の欠如した少年や、お人好しで運の悪い凄腕の殺し屋など、前作と同様に登場人物には現実感がありませんし、舞台設定もゲームの世界のような浮ついた感じです。

殺し屋がいっぱいというユーモラスなサスペンスで、テンポで読ませるようなところがありますけど、ラストの方では突然胸のすくような解決をしてしまって、まぁエンターティメントはこうでないとね。