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宮部みゆき「ソロモンの偽証」の感想です。

宮部みゆき「ソロモンの偽証」☆☆☆

ソロモンの偽証

雪が積もるクリスマスの朝の中学校で、中2の男子生徒の死体が発見された。

見つけたのは亡くなった生徒と同じクラスの男子生徒。警察は校舎の屋上から墜落した事故死で、遺書は見つからなかったものの飛び降り自殺と判断する。

死んだ少年は秋頃に不良少年3人組と諍い、その事件以降不登校になっていた。

動機はハッキリしないものの自殺として片付いたはずの事件だったが、不良少年3人組が少年を突き落とした場面を目撃したとの匿名の告発状が、学校、担任教師、そして少年のクラスメートで父親が警視庁の刑事をしている女子生徒の自宅に送られてくる。

告発状の内容は怪文書の域を出ていないもので、学校は差出人を特定して調べる必要性を感じなかったが、その文章がマスコミに知られ、TV番組として放映されたことから大騒動になってしまう。

PTAの会合が開かれ、収拾がつかない大混乱の中で、校長が責任を取る形で辞職し、一度は騒動が収まったかに見えた。

しかし続けて起こった新たな悲劇に、中3となったかつてのクラスメートたちは自分たちの力で真相を究明しようと、それぞれが判事、検察官、弁護士、陪審員となって、不良少年たちのボスを被告とした裁判を開くことを決める。


「事件」「決意」「法廷」の三部構成の長編ミステリィです。

クラスメートの死に直面した生徒たちが、その原因を巡って自分たちで自分たちの気持ちの決着をつけようと始めた裁判。そこに至るまでの道のりが丁寧に描かれていて、実に読み応えがあります。

正直言って、こんなにスゴイ中学生がいるはずないとは思いました。

裁判に関わっている生徒たち全員が、ごく平凡な生徒だったとしても、それなりに考えを巡らして、非凡な行動をとります。

リアリティがないと言えばないのですが、しかし一人ひとりの心の中や環境を丁寧に描いているので、管理人は違和感はあまり感じずに読みました。

自分の中学時代を思い返せば、多分こんな風にもの事に真剣に向き合うということはなかったと思いますが、でもこういう中学生も実際にいるんじゃないかと言う気もします。

第三部の裁判の場面は下手な法廷モノよりも緊迫感があります。

裁判に至るまでの過程で、何となく事件の全貌が見当つきますが、それでも引きこまれてしまいました。

とても長い小説ですが実に読み応えがあって長さを感じません。作者の筆力には感服します。