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宮部みゆき「ペテロの葬列」の感想です。

宮部みゆき「ペテロの葬列」☆☆☆

ペテロの葬列

妻の父が一代で築き上げた巨大企業グループの広報室に務める杉村三郎は、編集長・園田と取材に出かけた帰路、謎の老人が起こしたバスジャック事件に被害者として巻き込まれてしまう。

警察に不可解な要求を出した老人は、警察の突入時の混乱の最中に自殺して事件は幕を下ろしたかに見えたのだが・・・。


「誰か」「名もなき毒」に続く資産家の娘と結婚した逆玉サラリーマン杉村三郎を主人公にしたミステリィ・シリーズの3作目になります。

この作品の大きなテーマは、人間誰の心のなかにも潜んでいる闇の部分の存在と悪意の伝播、詐欺事件の被害者と加害者の関係、罪を悔い改めることについて等々になるかと思います。

バスジャックが発生するのっけから、物語に引き込まれてしまいます。

実はこの作品、アマゾンのレビューでは後味が悪すぎるとして評価が低いと家内に聞いて、そうなのかと思いつつ読んだのですが、そんな事に関係なく宮部みゆきの巧みな語り口に乗せられて、読むのを止められない感じです。

そもそも前2作にしたって、けっして後味が良い話ではなかったので、さして気にすることもなく読み進みましたが、途中でひょっとしたらと思うことがあって、読んだ結果はその通りの展開でした。

確かに1作目から読んでいた読者としては、これは中々どうして納得できる内容ではないかもしれませんが、管理人はこういう結末にした作者の力量はすごいものがあると思います。

この作品には続編を出して欲しい。作中で登場人物が言うように、お人好し探偵杉村三郎の姿を是非見てみたい。

その際には変に予定調和の物語ではなく、また新しい展開で進めていただきたい。

新しいシリーズの幕開けだったかと思えば、こういう決着の付け方もありかなと言う気がします。

但し、管理人が20代の頃だったら、やっぱり納得行かなかっただろうなぁ・・・。