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マイケル・マーシャル・スミス「スペアーズ」の感想です。

マイケル・マーシャル・スミス「スペアーズ」☆☆☆

スペアーズ

人々が巨大な飛行船に乗って移動している世界で、1機の飛行船が地上に降り、そのまま地上に定着していた。

飛行船はショッピング・モールや住宅などがある200階建てのビルのような形状で、裕福な人も中流の人もこの飛行船に住み暮らしている。

この飛行船に元警官のジャックが数人の子供たちを連れて戻ってくる。

ジャックが連れてきた子供たちは、スペアと呼ばれる隠された存在の子供たちで、裕福な人たちの細胞から培養されて作られたクローン人間だった。

スペアは人里離れた「農場」と呼ばれる場所で飼育され、オリジナルの人間が怪我や病気などで手足や臓器に問題が起こった時に、スペアの体から同じ部位を取り出して、オリジナルへの移植をスムーズに行うために生かされていた。

ジャックは「農場」で働いていた時に、この子供たちの境遇を知り、その事実に怒りを覚えて、彼らを連れて「農場」から逃げ出して飛行船に忍び込んだのだった。

しかしスペアを追う勢力が現れ・・・。


ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンが主演した「アイランド」という映画の主題が、裕福な人たちが自分に何か事故などが起こった時に臓器移植が出来るようクローン化された自分自身を用意しておくというものでしたが、このSF小説のテーマはそれの原型になるようなものです。

マイケル・マーシャル・スミスのSF作品は「オンリー・フォワード」もそうでしたけど、設定とアイディアが実に斬新ですね。

この作品もスペアの存在だけでもユニークなのに、地上に降りた巨大飛行船、「ギャップ」という名の不思議な異世界など盛り沢山のアイディアが積み込まれていて、独特の世界が展開されていきます。

1990年代のSFですがテーマは今日的だし、内容の濃い面白い作品です。