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ロバート・R・マキャモン「ミステリー・ウォーク」の感想です。

ロバート・R・マキャモン「ミステリー・ウォーク」☆☆

ミステリー・ウォーク

この世に未練を残して死んだ者の魂は、時には生きている人間に悪影響を及ぼす事がある。

そんな死者の魂を浄化する能力をインディアンである母から受け継いだビリー・クリークモアは、偏見に満ちた1960年代の南部の田舎町で、周囲の人たちの偏見や悪意、隠然とした力を持つキリスト教伝道者ファルコナーの敵意、不滅の悪の存在シェイプ・チェンジャーと戦いながら、己を信じて強く生きていく。

この作品は、そういう少年の成長を描いた物語です。

母や祖母の指導もあって、貧しい環境に育ちながらも、少年から青年へと強く正しく成長していくビリーと、恵まれた伝道者の息子として育ち治癒の能力を持ちながらも、それを生かしきれない少年ウェインを対比させて、物語は展開していきます。

大傑作「少年時代」の雰囲気をどことなく感じさせながら、ビリーたちに悪意を浴びせる伝道師の親子や、大いなる悪の存在を登場させたホラー・ファンタジィで、善と悪の対決を描いた作品の中に、どこか懐かしさを感じながら読みました。

どんな理不尽にも耐えるビリーの母の愛の強さ・深さがとても印象的な作品で、面白かったです。