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恩田陸「蜜蜂と遠雷」の感想です。

恩田陸「蜜蜂と遠雷」☆☆☆

蜜蜂と遠雷

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクールの出場者を決めるオーディション会場の一つに、最近亡くなったばかりの世界的ピアニスト、ユウジ・フォン=ホフマンの推薦状を持った少年・風間塵が現れる。

彼の弾くピアノは3人の審査員に衝撃を与え、そのあまりの規格外の演奏は激論を巻き起こすが、彼をギフトにするか災厄にするかは我々次第だというホフマンからの謎の推薦状もあって、正規のピアノ教育を受けたことのない15歳の天才少年・風間塵のコンクールへの出場が決まった。

一方でこのコンクールには、母の突然死にショックを受けて演奏活動から遠ざかっていたかつての天才少女・栄伝亜夜、ジュリアード音楽院で学ぶ優勝候補のマサル・C・レヴィ=アナトール、楽器店勤務のサラリーマンながら一度だけでも世界的なコンクールで演奏したかった青年・高島明石など、多くの優秀なピアニストたちが参加する。

3次に渡る予選と本戦を経て、コンクールで優勝するのは果たして誰なのか?

ピアノコンクールを舞台にして、音楽の道を真摯に歩む若きコンテスタントたちの姿を描いた音楽小説。


物語の中心にいるのは、養蜂家の父とともに世界を転々と歩き、正規の音楽教育を受けたこともなく、家にピアノすらなかったのに心打つ演奏をする天才少年の風間塵ですが、どちらかと言えば13歳でピアノ演奏家の道を自ら断った音大生・栄伝亜夜の方が主人公っぽい感じです。

風間塵は規格外の天才すぎて、コンクールで正当な評価が受けられないタイプ。一色まことのコミック「ピアノの森」の一ノ瀬海を連想します。

それでも一ノ瀬海が恩師の元で教育を受けて大きく成長するのに対して、風間塵はそういう事もなさそうで、この辺りが少々難しい設定という気がします。

風間塵以外は天才であっても子供の頃から正規の音楽教育を受けてきた人ばかりですが、ただどうも音楽に対する心構えがフニャフニャしているような感じで、読んでいてとても面白かったのですが、どっしりとした重厚さは感じませんでした。

ピアノコンクールを舞台にした人間模様を描いた作品としても、管理人は「ピアノの森」の方がしっくりと来ましたね。

面白くて一気読みしたし、本屋大賞と直木賞をダブル受賞した小説というのは、今のところこの作品以外には記憶にないのですが、何か物足りなさを感じた作品でも有りました。期待値が高すぎたのかもしれません。