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加納朋子「はるひのの、はる」の感想です。

加納朋子「はるひのの、はる」☆☆☆

はるひのの、はる

佐々良という町を舞台にした「ささらさや」「てるてるあした」に続く「ささら」シリーズの3作目にして完結編となるファンタジィです。


「ささらさや」では赤ちゃんだった少年ユウスケが主人公の6篇の短篇集です。

小学校に入学する前のユウスケから高校生になるまでのユウスケの成長と、ユウスケが数年に一度出会うはるひという謎の少女との触れ合い、幽霊を見て会話することが出来る不思議な能力を持つユウスケが、はるひから頼まれてする事から変わっていく世界などが描かれています。

物語は時系列に沿って進みますが、最後の章になって今までの事件の謎が解明されるという趣向が上手く出来ていて、なかなか興味深い物語になっています。

作者の人間に対する優しさのようなものが感じられるシリーズの完結編という事ですが、このシリーズは舞台となる町や登場人物が少し重なるだけで、それぞれ別の物語になっていますから、また続きが書かれても良いですね。

幽霊が見えるというと、どうしてもホラーっぽい作品を連想しますが、クーンツの「オッド・トーマス」のシリーズもそうですが、どこか情緒がある作品が多いように思います。

この作品も素敵な作品でした。