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ダン・シモンズ「愛死」の感想です。

ダン・シモンズ「愛死」☆☆

愛死

「愛と死」をテーマにした5編の中短編を収録した短編集で、全体的に暗い雰囲気の作品が多かったです。

インディアンの伝承を基にしたという「歯のある女と寝た話」は面白かったですね。

「真夜中のエントロピー・ベッド」は信じられないような事故を扱っている辺りが「ダーウィンの剃刀」に通じるところがある作品ですが、少し分かりづらい印象を受けました。

「バンコクに死す」は「カーリーの歌」のような雰囲気が漂う、吸血鬼の登場するホラー・ミステリィっぽい作品で、基本は愛を描いています。

「フラッシュ・バック」は過去を再現するドラッグに浸された米国社会を描いたSFで、少しハーラン・エリスンみたいな雰囲気を感じました。

そして「大いなる恋人」。第1次大戦に赴いた詩人の日記を通して語られる物語は、ハイペリオンの「兵士の物語」に少し通じるところがあるように思いましたが、どうやらテーマは愛と死のようです。正直言って分かりづらい作品でしたが、戦争の悲惨さは伝わってきます。

全体的にダン・シモンズの他の長編の元となる習作っぽい作品を集めたのでしょうか。

つまらない訳ではないけど、どこか短編らしい切れ味を感じない作品が多かったように思います。