直木賞受賞作
直木賞はご承知の通り、菊池寛が1935年に芥川賞とともに創設した文学賞です。正しくは直木三十五賞と言いますが、通称の直木賞の方が一般的な言い方ですね。
純文学の芥川賞と大衆文学の直木賞で、どちらも当初は「無名若しくは新進作家」が対象だったはずですが、直木賞はいつのまにやら大衆文学のもっとも権威ある賞になってしまいました。
権威を疑う癖のある管理人は、大衆文学と言いつつSF・ファンタジィには与えられない傾向を見て、本当に面白い作品は選ばれない文学賞という印象を持っていましたが、実際には流石にという作品も多いです。
以下は受賞作の一覧です。
第169回(令和5年
2023年上半期)永井紗耶子
木挽町のあだ討ち
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの?末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。
(「内容紹介」より)第169回(令和5年
2023年上半期)垣根涼介
極楽征夷大将軍
動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
(「内容紹介」より)第168回(令和4年
2022年下半期)千早茜
しろがねの葉
戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
(「内容紹介」より)第168回(令和4年
2022年下半期)小川哲
地図と拳
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
(「内容紹介」より)第167回(令和4年
2022年上半期)窪美澄
夜に星を放つ
コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。
(「内容紹介」より)第166回(令和3年
2021年下半期)今村翔吾
塞王の楯
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。幼き匡介(きょうすけ)はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。匡介は源斎を頭目とする穴太衆(あのうしゅう)(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)より琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。一方、そこを攻めようとしている毛利元康は、国友衆(くにともしゅう)に鉄砲作りを依頼した。「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じる国友衆の次期頭目・彦九郎(げんくろう)は、「飛田屋を叩き潰す」と宣言する。大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける――。
(「内容紹介」より)第166回(令和3年
2021年下半期)米澤穂信
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の到達点。『満願』『王とサーカス』の著者が挑む戦国×ミステリの新王道。
(「内容紹介」より)第165回(令和3年
2021年上半期)澤田瞳子
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。 暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。 河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだった――。
(「内容紹介」より)第165回(令和3年
2021年上半期)佐藤究
テスカトリポカ
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。
(「内容紹介」より)第164回(令和2年
2020年下半期)西條奈加
心淋し川
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張方をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。裏長屋で飯屋を営む与吾蔵は、仕入れ帰りに立ち寄る根津権現で、小さな唄声を聞く。かつて、荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が手酷く捨ててしまった女がよく口にしていた、珍しい唄だった。唄声の主は小さな女の子供。思わず声をかけた与吾蔵だったが――(「はじめましょ」)ほか全六話。生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。
(「内容紹介」より)第163回(令和2年
2020年上半期)馳星周
少年と犬
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……
(「内容紹介」より)第162回(令和元年
2019年下半期)川越宗一
熱源
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。 文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
(「内容紹介」より)第161回(令和元年
2019年上半期)大島真寿美
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章(のちの半二)。末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、竹本座に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。父からもらった近松門左衛門の硯に導かれるように物書きの世界に入ったが、弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった……。著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した奇蹟の芸術小説。
(「内容紹介」より)第160回(平成30年
2018年下半期)真藤順丈
宝島
英雄を失った島に新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり、同じ夢に向かった。
(「内容紹介」より)第159回(平成30年
2018年上半期)島本理生
ファーストラヴ
夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?「家族」という名の迷宮を描く長編小説
(「内容紹介」より)第158回(平成29年
2017年下半期)門井慶喜
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。
(「内容紹介」より)第157回(平成29年
2017年上半期)佐藤正午
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。
(「内容紹介」より)第156回(平成28年
2016年下半期)恩田陸
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
国際ピアノコンクールの若きコンテスタントたち。今は亡き世界的なピアニストからの推薦状を持って現れた正規の音楽教育を受けていない15歳の規格外の天才少年・風間塵。子供の頃から天才少女と呼ばれ演奏活動をしていたにも係わらず、母親の突然死から表舞台から去っていた20歳の音大生・栄伝亜夜。ジュリアード音楽院に在籍する完璧なピアニストのマサル・C・レヴィ=アナトール。子持ちのサラリーマンとして楽器店で働きながら、最後の機会としてコンクールに参加した28歳の青年・高島明石。その4人を中心として音楽に真摯に向き合う人間像を描いた音楽小説。
第155回(平成28年
2016年上半期)荻原浩
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
「海の見える理髪店「いつか来た道」「遠くから来た手紙」「空は今日もスカイ」「時のない時計」「成人式」の6篇の短編を収録した第155回直木賞受賞作。夫婦や親子、家族のつながりを描いて、少し切なくてしんみりしたり、ニヤッとしたりするような作品集。
第154回(平成27年
2015年下半期)青山文平
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
女運のない旗本が幼馴染の武士との付き合いを通して女性と暮らす面倒と一人暮らしの寂寥感について考えを巡らす表題作他、「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付」「ひと夏」「逢対」の6篇の短編を収録した第154回直木賞受賞の時代小説。
第153回(平成27年
2015年上半期)東山彰良
- 再読度 ☆:読後感 ☆☆
1970年代の台湾、大陸で共産党に敗れた国民党の兵士として台湾に逃げてきた祖父を持つ高校生の葉秋生は、蒋介石総統が亡くなった混乱の中、自分の店で殺害されていた祖父を発見する。乱暴者ではあったがそれなりに人望もあった祖父の死と、親友にそそのかされて行った替え玉受験がバレたことから、秋生の人生は変転していく。直木賞を受賞した青春小説。
第152回(平成26年
2014年下半期)西加奈子
サラバ!
圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
(「内容紹介」より)第151回(平成26年
2014年上半期)黒川博行
破門
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪したプロデューサーを追い、桑原は本家筋の構成員を病院送りにしてしまう。組同士の込みあいをふたりは切り抜けられるのか
(「内容紹介」より)第150回(平成25年
2013年下半期)姫野カオルコ
昭和の犬
昭和三十三年滋賀県に生まれた柏木イク。気難しい父親と、娘が犬に咬まれたのを笑う母親と暮らしたのは、水道も便所もない家。理不尽な毎日だったけど、傍らには時に猫が、いつも犬が、いてくれた。平凡なイクの歳月を通し見える、高度経済成長期の日本。その翳り。犬を撫でるように、猫の足音のように、濃やかで尊い日々の幸せを描く、直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第150回(平成25年
2013年下半期)朝井まかて
恋歌
樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させ水戸の藩士に嫁ぐ。しかし、夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗党の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される。幕末から明治へと駆け抜けた歌人を描く直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第149回(平成25年
2013年上半期)桜木紫乃
ホテルローヤル
北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く――。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昂揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。
(「内容紹介」より)第148回(平成24年
2012年下半期)安部龍太郎
等伯
能登七尾の畠山家に仕える武士の家に生まれた信春は、10歳で長谷川家の養子になる。養父は絵師でもあり、信春も若いころから絵仏師として名声を得ていた。だが信春は地方の絵仏師で埋もれるつもりはなく、京に出て天下一の絵師になるという野望を持っていた。そんな折、畠山家の内紛に巻き込まれて養父母を失い、妻子を連れて生まれ故郷を出る。そうして各地を転々とし、信長との確執もありながらついには洛中で絵師として身を立てる。だがその後も、狩野永徳との対立、心の師と仰ぐ千利休の自刃、息子の死など、次々と悲劇が信春を襲う。そうして彼がたどりついたのが、六曲一双の「松林図屏風」だった――。直木賞受賞、長谷川等伯の誕生を骨太とに描いた傑作長編。
(「内容紹介」より)第148回(平成24年
2012年下半期)朝井リョウ
何者
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第147回(平成24年
2012年上半期)辻村深月
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
望むことは、罪ですか? 誰もが顔見知りの小さな町で盗みを繰り返す友達のお母さん、結婚をせっつく田舎体質にうんざりしている女の周囲で続くボヤ、出会い系サイトで知り合ったDV男との逃避行──。普通の町に生きるありふれた人々に、ふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる五篇。現代の地方の閉塞感を背景に、五人の女がささやかな夢を叶える鍵を求めてもがく様を、時に突き放し、時にそっと寄り添い描き出す。著者の巧みな筆が光る傑作。第147回直木賞受賞作!
(「内容紹介」より)第146回(平成23年
2011年下半期)葉室麟
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷 の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。 編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触れるうち、無実を信じるように なり……。凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説!
(「内容紹介」より)第145回(平成23年
2011年上半期)池井戸潤
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
元はロケットエンジンの開発研究者だった佃航平は実家の中小企業・佃製作所を引き継ぎ、独自の技術開発に力を注いで着実に実績を伸ばしていた。しかし長引く不況の中、大口顧客から取引停止を言い渡され、銀行からは新規融資に難色を示された処に、他社の類似製品を真似して販売することに長けている大手企業ナカジマ工業に特許侵害の訴訟を起こされる。同じ頃、日本有数の大企業・帝国重工は社運をかけた新型ロケット搭載エンジンのバルブについて、佃製作所が先に特許を取得している事を知る。横暴な大手企業に自社技術の優位性を信じて立ち向かう佃航平は・・・。第145回直木賞受賞の傑作ビジネス小説。
第144回(平成22年
2010年下半期)道尾秀介
月と蟹
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」──家にも学校にも居場所が見つけられない小学生の慎一と春也は、ヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。100円欲しい、いじめっ子をこらしめるなどの他愛ない儀式は、いつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。鎌倉の風や潮のにおいまで感じさせる瑞々しい筆致で描かれ、少年たちのひと夏が切なく胸に迫る長篇小説。 第144回直木賞受賞。
(「内容紹介」より)第144回(平成22年
2010年下半期)木内昇
漂砂のうたう
明治10年、根津遊郭。御家人の次男坊だった定九郎は、過去を隠し仲見世の「立番」として働いていた。花魁や遊郭に絡む男たち。新時代に取り残された人々の挫折と屈託、夢を描く、第144回直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第143回(平成22年
2010年上半期)中島京子
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
昭和の初期ののどかな時代から徐々に戦時色が濃くなっていく時代を舞台にして、山形の片田舎から東京に出てきた布宮タキが、女中として奉公した赤い三角屋根の小さなおうち平井家で過ごした日々。独り身の老女となったタキが、その頃を回顧して書いた覚え書ノートを読むタキの甥の息子・健史により、タキが考えていたこと、ささやかな秘密などが明らかになる。ノスタルジックな中に当時の人々が生きる様子が見事に描かれた第143回直木賞受賞の傑作。
第142回(平成21年
2009年下半期)佐々木譲
廃墟に乞う
道警の敏腕刑事だった仙道孝司は、「ある事件」をきっかけに療養中の身。だが回復途上の仙道に、次々とやっかいな相談事が舞い込み……。警察手帳も持たず、拳銃も持てない仙道がどのような捜査をするのか?
(「内容紹介」より)第142回(平成21年
2009年下半期)白石一文
ほかならぬ人へ
「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」――愛するべき真の相手はどこにいるのだろう?「恋愛の本質」に果敢に挑み、描き上げた“もっとも純粋な”恋愛小説。第142回直木賞受賞作!
(「内容紹介」より)第141回(平成21年
2009年上半期)北村薫
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
突如屋敷から消えた子爵の謎を解く「不在の父」、深夜に上野の博物館に出向いた少年の謎を解く「獅子と地下鉄」、日本に居ないはずの婚約者が写真に写っていた訳は?という表題作の3つの短篇を収録した「ベッキーさん」シリーズの完結作。第141回直木賞受賞。
第140回(平成20年
2008年下半期)山本兼一
利休にたずねよ
女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭に昇り詰めていく。刀の抜き身のごとき鋭さを持つ利休は、秀吉の参謀としても、その力を如何なく発揮し、秀吉の天下取りを後押し。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、理不尽な罪状を突きつけられて切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出したものとは何だったのか。また、利休の「茶の道」を異界へと導いた、若き日の恋とは…。「侘び茶」を完成させ、「茶聖」と崇められている千利休。その伝説のベールを、思いがけない手法で剥がしていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第140回(平成20年
2008年下半期)天童荒太
悼む人
全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼を巡り、夫を殺した女、 人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる
(「内容紹介」より)第139回(平成20年
2008年上半期)井上荒野
切羽へ
静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所のこと。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった美しい切なさに満ちた恋愛小説。
(「内容紹介」より)第138回(平成19年
2007年下半期)桜庭一樹
私の男
- 再読度 ☆:読後感 ☆☆
落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった10歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から2人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く。
(「内容紹介」より)第137回(平成19年
2007年上半期)松井今朝子
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
吉原一と謳われた花魁・葛城が忽然と姿を消した。その謎を解き明かそうとする男が、引手茶屋の内儀、遣り手婆や幇間、女衒など葛城の周囲の人々に尋ねて分かる一人の女の実像と虚像。第137回直木賞受賞の傑作時代小説。
第136回(平成18年
2006年下半期)該当作なし
第135回(平成18年
2006年上半期)森絵都
風に舞いあがるビニールシート
国連で難民事業に携わる里佳は上司で、元夫のエドがアフガンで死んだという知らせに立ち直れない。市井で懸命に生きる人を描く6篇
(「内容紹介」より)第135回(平成18年
2006年上半期)三浦しをん
まほろ駅前多田便利軒
まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦が転がり込み、二人は様々な依頼に精を出す。ペット預かりに塾の送迎、納屋の整理……ありふれた依頼のはずが、このコンビにかかると何故かきな臭い状況に。予言する曽根田のばあちゃん、駅裏で夜の仕事をするルルとハイシー、小学生の由良、バスを監視する岡老人……個性的な依頼人たちが登場し、抱腹絶倒かつ心温まるストーリーを展開。そんな中、多田と行天の過去が次第に明らかになり、二人の抱えるものと生き方が、読者の心に突き刺さる!
(「内容紹介」より)第134回(平成17年
2005年下半期)東野圭吾
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘の美里と暮らす隣人の花岡靖子に秘かな想いを寄せていた。 ある日、靖子の前夫・富樫が母娘の居場所を突き止めて訪ねてきた。金を無心し、暴力をふるう富樫を、靖子と美里は殺してしまう。 呆然とする二人を救うために、石神は完全犯罪を企てる。 だが皮肉にも、石神と帝都大学の同期であり、親友である物理学者の湯川学がその謎に挑むことになる。 ガリレオシリーズ初の長編。第134回直木賞受賞作。第6回本格ミステリ大賞受賞。2005年度の国内の主要ミステリランキング「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい! 」「週刊文春ミステリベスト10」すべてにおいて1位獲得、エドガー賞(MWA主催)候補作にもなった。
(「内容紹介」より)第133回(平成17年
2005年上半期)朱川湊人
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆
「トカピの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」の6篇を収録した、社会的な弱者に対する暖かい視点が印象的な第133回直木賞受賞の短編集。
第132回(平成16年
2004年下半期)角田光代
対岸の彼女
結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう。ベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めた専業主婦の小夜子。二人の出会いと友情は、些細なことから亀裂を生じていくが……。多様化した現代を生きる女性の姿を描く感動の傑作長篇。第132回直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第131回(平成16年
2004年上半期)熊谷達也
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
大正時代の東北の寒村でマタギ(猟師)として育ち、激しい自然の中で誇りとリスペクトを持って獲物と対峙してきた山の男・松橋富治の男の生きざまと生涯を描いた骨太の傑作小説。
第131回(平成16年
2004年上半期)奥田英朗
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
患者に注射をするのが大好きというメチャクチャな精神科医を主人公にした伊良部一郎シリーズの第2作目で、第131回直木賞を受賞したユーモア溢れる連作短編集。「空中ブランコ」「ハリネズミ」「義父のヅラ」「ホットコーナー」「女流作家」の5編を収録。
第130回(平成15年
2003年下半期)京極夏彦
後巷説百物語
文明開化の音がする明治十年。一等巡査の矢作らは、ある伝説の真偽を確かめるべく隠居老人・一白翁を訪ねた。翁は静かに、今は亡き者どもの話を語り始める。第130回直木賞受賞作。妖怪時代小説の金字塔!
(「内容紹介」より)第130回(平成15年
2003年下半期)江國香織
号泣する準備はできていた
私はたぶん泣きだすべきだったのだ。身も心もみちたりていた恋が終わり、淋しさのあまりねじ切れてしまいそうだったのだから――。濃密な恋がそこなわれていく悲しみを描く表題作のほか、17歳のほろ苦い初デートの思い出を綴った「じゃこじゃこのビスケット」など全12篇。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、きっと大丈夫、切り抜けられる……。そう囁いてくれる直木賞受賞短篇集。
(「内容紹介」より)第129回(平成15年
2003年上半期)村山由佳
星々の舟
家族だからさびしい。他人だからせつない──禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄と、いじめの過去から脱却できないその娘。厳格な父は戦争の傷痕を抱いて──平凡な家庭像を保ちながらも、突然訪れる残酷な破綻。性別、世代、価値観のちがう人間同士が、夜空の星々のようにそれぞれ瞬き、輝きながら「家」というひとつの舟に乗り、時の海を渡っていく。愛とは、家族とはなにか。03年直木賞受賞の、心ふるえる感動の物語。
(「内容紹介」より)第129回(平成15年
2003年上半期)石田衣良
4TEEN フォーティーン
銀座から地下鉄で10分、木造の長屋ともんじゃ焼きとスカイラインを切り取る超高層マンションが調和して共存する町・月島。この町で僕たちは恋をし、傷つき、死と出会い、いたわり合い、そして大人になっていく…。14歳の中学生4人組が1年間に出会った8つの瑞々しい物語。
(「BOOK」データベースより)第128回(平成14年
2002年下半期)該当作なし
第127回(平成14年
2002年上半期)乙川優三郎
生きる
藩衰亡を防ぐため、家老から追腹を禁ぜられた又右衛門。跡取りの切腹、身内や家中の非難の中、ただひたすらに生きた12年を問う。苦境に人の心を支えるものとは? 『オール読物』掲載の時代小説3篇を収録。
(「BOOK」データベースより)第126回(平成13年
2001年下半期)唯川恵
肩ごしの恋人
自立した女は他人も自分も信じられない。女性を武器にする女は結婚、離婚を繰り返す。そんな27歳の二人の主人公と物語を紡ぐのは男子高校生、やさしい妻帯者、美しいゲイ…。等身大の女性を描く長編本格恋愛小説。第126回直木賞受賞。
(「BOOK」データベースより)第126回(平成13年
2001年下半期)山本一力
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。己の技量一筋に生きる永吉を支えるおふみ。やがて夫婦となった二人は、京と江戸との味覚の違いに悩みながらもやっと表通りに店を構える。彼らを引き継いだ三人の子らの有為転変を、親子二代にわたって描いた第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。
(「BOOK」データベースより)第125回(平成13年
2001年上半期)藤田宜永
愛の領分
不倫でもないのに秘密の匂いがする。愛を信じられない男と女。それでも出会ってしまった彼らの運命。すべてをかなぐり捨てた四人がゆきつく果ては…。待望の恋愛長篇。
(「BOOK」データベースより)第124回(平成12年
2000年下半期)重松清
- 再読度 ☆☆:読後感 ☆☆☆
炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…〈F〉で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込んでいったつもりだ。そのうえで、けっきょくはFiction、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼく(著者)は信じていた。
(「BOOK」データベースより)第124回(平成12年
2000年下半期)山本文緒
プラナリア
どうして私はこんなにひねくれているんだろう―。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の“無職”をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。
(「BOOK」データベースより)第123回(平成12年
2000年上半期)金城一紀
GO
広い世界を見るんだ―。僕は“在日朝鮮人”から“在日韓国人”に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子高に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった―。感動の青春恋愛小説、待望の新装完全版登場!第123回直木賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)第123回(平成12年
2000年上半期)船戸与一
虹の谷の五月
少年は慟哭の叫びを封印し、あふれる想いを胸に沈める。高らかに謳う、誇りと希望の叙事詩。新世紀の冒険小説の指標、ここに完成。
(「BOOK」データベースより)第122回(平成11年
1999年下半期)なかにし礼
長崎ぶらぶら節
「な、愛八、おうち、おいと一緒に、長崎の古か歌ば探して歩かんね」―愛しい古賀十二郎の誘いに、丸山芸者愛八の胸ははり裂けんばかりに高鳴った。歌と、恋と、無償の愛。こんなに一途に生きた女がいた。
(「BOOK」データベースより)第121回(平成11年
1999年上半期)桐野夏生
柔らかな頬
私は子供を捨ててもいいと思ったことがある。5歳の娘が失踪した。夫も愛人も私を救えない。絶望すら求める地獄をどう生き抜くか。
(「BOOK」データベースより)第121回(平成11年
1999年上半期)佐藤賢一
王妃の離婚
1498年フランス。国王が王妃に対して離婚裁判を起こした。田舎弁護士フランソワは、その不正な裁判に義憤にかられ、孤立無援の王妃の弁護を引き受ける……。第121回直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第120回(平成10年
1998年下半期)宮部みゆき
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
事件はなぜ起こったか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか――。東京荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった……。ドキュメンタリー的手法で現代社会ならではの悲劇を浮き彫りにする、直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第119回(平成10年
1998年上半期)車谷長吉
赤目四十八瀧心中未遂
「私」はアパートの一室でモツを串に刺し続けた。向いの部屋に住む女の背中一面には、迦陵頻伽の刺青があった。ある日、女は私の部屋の戸を開けた。「うちを連れて逃げてッ」―。圧倒的な小説作りの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る。直木賞受賞で文壇を騒然とさせた話題作。
(「BOOK」データベースより)第118回(平成9年
1997年下半期)該当作なし
第117回(平成9年
1997年上半期)浅田次郎
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた―。心を揺さぶる“やさしい奇蹟”の物語…表題作はじめ、「ラブ・レター」「角筈にて」など8編収録。第117回直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)第117回(平成9年
1997年上半期)篠田節子
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
女たちよ!これはオンナの応援歌ではないが、勇気がわく物語である。めげず挫けず我が道をゆく聖戦(ジハード)という企み。
(「BOOK」データベースより)第116回(平成8年
1996年下半期)坂東眞砂子
山妣
明治末期、文明開化の波も遠い越後の山里。小正月と山神への奉納芝居の準備で活気づく村に、芝居指南のため、東京から旅芸人が招かれる。不毛の肉体を持て余す美貌の役者・涼之助と、雪に閉ざされた村の暮らしに倦いている地主の家の嫁・てる。二人の密通が序曲となり、悲劇の幕が開いた―人間の業が生みだす壮絶な運命を未曾有の濃密さで描き、伝奇小説の枠を破った直木賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)第115回(平成8年
1996年上半期)乃南アサ
凍える牙
深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか?野獣との対決の時が次第に近づいていた―。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。
(「BOOK」データベースより)第114回(平成7年
1995年下半期)藤原伊織
テロリストのパラソル
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそりと暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た事実とは……。史上初の乱歩賞&直木賞W受賞作。
(「内容紹介」より)第114回(平成7年
1995年下半期)小池真理子
- 再読度 ☆:読後感 ☆☆☆
1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事件の蔭で、一人の女が引き起こした発砲事件。当時学生だった布美子は、大学助教授・片瀬と妻の雛子との奔放な結びつきに惹かれ、倒錯した関係に陥っていく。が、一人の青年の出現によって生じた軋みが三人の微妙な均衡に悲劇をもたらした……。全編を覆う官能と虚無感。その奥底に漂う静謐な熱情を綴り、小池文学の頂点を極めた直木賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)第113回(平成7年
1995年上半期)赤瀬川隼
白球残映
四国の球場で目撃したのは突如、球界を去った名投手。元記者は謎を追って……。野球と女性への限りない憧憬を描く直木賞受賞作
(「内容紹介」より)第112回(平成6年
1994年下半期 )該当作なし
第111回(平成6年
1994年上半期)海老沢泰久
帰郷
故郷の町の自動車エンジン工場からF1チームのエンジン組み立てメンバーに選ばれた男の日常は輝かしい栄光の日々の連続だった。そして3年間の出向が終わって故郷に戻った男を待っていたのは味気ない、退屈な生活だった―喜びのあとに訪れる悲しさ、“成熟と喪失”を描いた第111回直木賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)第111回(平成6年
1994年上半期)中村彰彦
二つの山河
かれらも祖国のために戦ったのだから―。大正初め、徳島のドイツ人俘虜収容所では例のない寛容な処遇がなされた。日本人将兵・市民と俘虜との交歓を実現し、真のサムライと讃えられた会津人・松江豊寿。なぜ彼は陸軍の上層部に逆らっても信念を貫いたのか。国境を越える友愛を描いた直木賞受賞作。ほか二篇。
(「BOOK」データベースより)第110回(平成5年
1993年下半期)大沢在昌
新宿鮫 無間人形
新宿の若者たちの間で、舐めるだけで効く新型覚せい剤が流行り出した。薬を激しく憎む新宿署刑事・鮫島は、執拗に密売ルートを追う。財閥・香川家の昇・進兄弟の野望、薬の独占を狙う藤野組・角の策略、麻薬取締官の露骨な妨害、そして、恋人・晶は昇の手に…。現代を代表する超人気シリーズ第4弾、直木賞受賞の感動巨編、待望の文庫版で登場。
(「BOOK」データベースより)第110回(平成5年
1993年下半期)佐藤雅美
- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
争いは世の常、人の常。江戸の世で、その争いの相談所が恵比寿屋のような公事宿だ。ある日、若者が恵比寿屋を訪れ、兄が知らぬ男に金を返せと訴えられたと相談した。喜兵衛は怪しい臭いを感じとる。事件の真相は如何に? 江戸の街に生きる市井の人々を、愛情込めて描く長編時代小説。第110回直木賞受賞作。
(「内容紹介」より)